フィリピン武術バリンタワクの真髄とは?ブオット式トレーニングの実像とその背景【エスクリマ解説】

フィリピン武術「バリンタワク・エスクリマ」の中でも、ブオット流派に伝わるトレーニング法は、実戦性と身体感覚の鋭さで注目されています。
とくに、本流であるアンシオン・バコン門下のホセ・ビラシンが導入した「グルーピング(groupings)」構造とは異なり、ブオット系は段階的な分類を設けず、1対1のやり取りを通じて“感じて学ぶ”ことを重視する、より原型に近いスタイルを守っています。

私自身は、NickelStick Eskrima の生徒でありThe Philippine Art of Balintawak Eskrima Cuentada Volume 1 を通じて、グルーピングとは「小学3年生の教科書」のような基礎教育であるという理解を得ており、その考えに同調しています。
体系的に学ぶ上では有効な手段である一方で、それに続く段階として、グルーピングに依存しないブオット系の稽古法が参考になるのではと思いました。
本記事では、故テッド・ブオット師の技術を受け継ぐグロ・コンラッド・マニガス師によるトレーニング映像をもとに、グルーピングのない稽古スタイルの特徴と、そこに見られる身体感覚主導の学習方法を紹介します。

この動画は、フィリピン武術専門チャンネル「FMA Pulse」によって公開されました。FMA(Filipino Martial Arts)普及を目的とした情報発信を行っており、現地のマスターや後継者のインタビュー・実演を通して、その伝統と進化を紹介しています。

動画のポイントと解説

1. バリの原点に立ち返る「フィリピン式トレーニング」

グロ・マニガス師は、師匠であるテッド・ブオットから学んだ方法として、「フィリピン式の稽古」=厳密なカリキュラムを持たない中で、観察、繰り返し、身体で覚える学び方を重視しています。これは、グランドマスター・ボビー・タボアダが指摘するように、かつてのセブでは「教え」よりも「感じさせる」指導が主流だった文化的背景とも一致します​。

✅ 筆者考察:このような「身体の共鳴による学習」は、ロシアの関節トレーニング理論でも「接触感覚」として重視されています​。

2. 形式なき中に組織された技術:ドリルとカウンターの積層

動画では、ドリルの反復を通じて「感じる力」「予測の精度」を育てる様子が映し出されます。特に「カウンターのバリエーション」や「ディスアーム(武器奪取)」が自然に組み込まれるプロセスは、いわゆるスパーリングとは異なり、「計画された戦闘(Cuentada)」の思想が色濃く反映されています​。

✅ 補足:バリントワックにおけるCuentadaは、力の等化と反射的制御を前提に構築される「武道としての対話」そのものです。

The Philippine Art of Balintawak Eskrima Cuentada Volume1

3. 一対一での「気づかせる」指導法

ブオット系の稽古法は、「ティーチング」ではなく「リアクションを導く場作り」として展開されます。マニガス師の指導では、手取り足取り教えるよりも、打たれて気づかせる、一緒に打ちながら覚えさせる手法が印象的です。これは、GMタボアダが「マンツーマン指導を前提としたシステム」と語る理由とも一致します​。


4. シンプルな動きの中にある「戦闘的実用性」

映像に見られる稽古は、基本ブロックとカウンターが中心ですが、それだけで完結せず、相手の隙や重心移動に対応した自然な崩し(オフバランス)へと繋がっています。これは、ナイフや徒手のコンバットにも即応できる「フォームを持たない型」的な技術基盤と言えるでしょう。

✅ 参考:タボアダシステムの発展では、刃物や空手技法との融合も強調されています​。

The Philippine Art of Balintawak Eskrima Cuentada Volume1


5. 学びの中心にあるのは「感覚の訓練」

動画終盤では、マニガス師が「ルールではなく流れを読む力」が重要であると語ります。これは、パーベル・ツァツォーリンの『The Naked Warrior』における「筋力とは緊張を高める神経スキルである」との主張にも通じるものがあります​。バリントワックにおける反射と接触感覚の練磨は、まさに身体知の獲得そのものです。

💬 全文翻訳

じゃあ、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15……
よし、今度は中速で、それから速く。今ここで学ぼうとしていることを理解しないと、あとで振り返ったときに「他のテクニックは知ってるけど、基本はやってない」ってことになる。
基本をちゃんとやっておけば、現場でも自分で使えるようになる。そして、そこから新しい技を加えていけばいい。

続きは下記のサイトでご覧いただけます。

フィリピン武術バリンタワクの真髄とは?ブオット式トレーニングの実像とその背景【エスクリマ解説】|martialmetrics
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