最新の疫学研究や栄養学のレビューにより、卵の摂取が健康に及ぼす影響について新たな知見が報告されている。
マイケル・グレガー医師の著作『How Not to Age』および『How Not to Diet』では、その科学的根拠が多数紹介されている。
心血管疾患リスクの上昇
複数の大規模疫学研究によれば、卵の摂取量が1日あたり半個分増えるごとに、心血管疾患リスクおよび全死亡リスクが有意に上昇することが示されている。
また、「米国食事ガイドライン」では、食事性コレステロールの摂取は可能な限り少なくすることが依然として推奨されている。
LDLコレステロール値の影響
卵の摂取は、血中のLDLコレステロール値(いわゆる悪玉コレステロール)を有意に上昇させることが確認されている。
LDLコレステロールの上昇は、動脈硬化や冠動脈疾患の主要なリスク因子とされる。
認知機能との関連
『How Not to Diet』では、卵由来の食事性コレステロール摂取が、認知機能障害や記憶障害のリスク増大と関連することが報告されている。
この影響により、脳の老化が約3年分早まるという結果も示されている。
タンパク質摂取と死亡リスク
卵白タンパク質を植物性タンパク質に3%置き換えることにより、男女ともに死亡リスクが20%以上低下することが観察されている。
また、動物性タンパク質(肉・卵・乳製品)の高摂取はがん死亡リスクの4倍増加と関連する。
ルテイン・ゼアキサンチン供給源としての比較
卵はルテインやゼアキサンチン(目の健康に重要なカロテノイド)を含むが、緑黄色野菜の方がはるかに高含有である。
『How Not to Age』によれば、ほうれん草小さじ1杯で卵8個分のルテインが摂取可能とされ、米国農務省(USDA)のデータでも卵は視力保護栄養素の上位100食品に入っていない。
マイクロRNAの影響
最新の研究では、卵中に含まれるマイクロRNAがヒト血液中に取り込まれ、mRNA発現に影響する可能性が示唆されている。
この分野はなお研究途上にあり、さらなる検証が求められている。
食事の酸負荷
食事性酸負荷の観点でも、卵は比較的酸性寄りの食品に分類される。
牛肉と比べやや高い酸性負荷をもつが、一般的な摂取量では全体の酸性負荷に与える影響は限定的とされる。
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