1. サマリー
フィリピン武術(FMA)の一派であるバリンタワクは、その独特のトレーニングシステムと美しい技法で知られています。しかし、スパーリングにおいてもその「バリンタワクらしさ」は保てるのか? Paulo Rubio氏は、同じくバリンタワクの使い手であり、他のFMA流派にも精通するGuru Joe Apostol氏とともに、この疑問を探求しました。本記事では、その検証プロセスと得られた知見を紹介します。
2. 考察
バリンタワクの特徴とスパーリングの課題
バリンタワクの特徴の一つは、「グルーピング・システム」と呼ばれる訓練方法にあります。しかし、これをスパーリングでそのまま再現することは容易ではありません。スパーリングでは、自由な攻防が展開されるため、技法の再現性が低くなることが課題となります。
Rubio氏らは、スパーリングの中でバリンタワクの美しい動きを維持できるのかを検証するために、実験的な対戦を行いました。その結果、以下のような発見がありました。
① 連続攻撃ではなく、間を持たせる必要がある
バリンタワクの動きを保つためには、「ノンストップの連続攻撃」や「ポイント制の試合」のどちらでもない、独特の間合いを持つ必要があることが分かりました。互いに動きを確認しながら攻防することで、バリンタワクらしい流れを維持できるのです。
② 距離管理の難しさ
スティックを持った状態でのスパーリングは、パンチ主体のボクシングとは異なる距離管理が求められます。特に「ボクシングの間合い」ではなく、「バリンタワクの間合い」を意識することが重要です。Guru Joe氏は、中間距離での打撃を活用し、Rubio氏に適切な距離を保つ難しさを実感させました。
③ 美しさと実戦性のバランス
スパーリングの中でバリンタワクの特徴を保とうとすると、技術的に「乱れ」が生じることがありました。しかし、これは技法の問題ではなく、実際の戦闘状況に適応する過程で発生する自然な現象と言えます。
3. 結論
バリンタワクの美しさをスパーリングで保つことは可能ですが、一定の工夫が必要です。特に、連続攻撃を避け、適切な間合いを保ちつつ、技術の再現性を意識することが重要になります。また、完全な実戦形式に落とし込むのではなく、「美しさ」と「実用性」のバランスを見極めることが求められます。
Rubio氏は「バリンタワクのグルーピング・システムには、フルコンタクトのスティックファイトにも応用できる要素がある」と述べており、今後さらにこの研究を深めていく意向を示しています。FMAのスパーリングにおけるバリンタワクの活用は、まだ発展の余地が大きい分野と言えるでしょう。
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