フィリピン武術「バリンタワク」のテクニック:トゥンバダ(Tumbada)詳細解説

トゥンバダとは?

トゥンバダ(Tumbada)はフィリピン伝統武術「バリンタワク・アルニス」の重要技術の一つで、「倒す」「転ばせる」という意味を持ちます。バリンタワクにおける技術分類(グルーピングシステム)の中でグループ4に位置付けられています。

技の特徴

トゥンバダは単独ではなく、他の技(特にグループ2のボディ技術)と組み合わせて用いることで最大の効果を発揮します。

トゥンバダの種類

  • 防御としてのトゥンバダ: 相手の攻撃を受け流す際、直線的ではなく倒れ込む(Stumble)ようにブロックを行う。
  • 攻撃としてのトゥンバダ: 攻撃時にも使え、特に相手の左手(リードハンド)を狙い「左手を無効化する(left hand terminator)」効果がある。

技の具体的な実践方法

トゥンバダはアバニコ(Abaniko、扇型のフリック動作)を基本にしており、腰やそれ以下の位置での小さく隠れた動きとして行われます。

  • 相手の攻撃の高さによって動作を変える。
    • 高めの攻撃には上方での反応
    • 中程度の攻撃には腰の位置で対応
    • 低めの攻撃にはさらに低く対応

攻撃動作の特徴

  • サグパ(Sagpa): 手首のフリックを使った打撃で、ビサヤ語で「平手打ち」を意味する。
  • 相手の攻撃をブロックした後、迅速に相手の左手を狙うことが重要。

距離と技術の関連性

トゥンバダは特に中距離(ミッドレンジ)で有効です。

  • 近距離: 肘打ちなどが適する。
  • 中距離: トゥンバダが効果的。手が届く範囲で相手を倒す、またはバランスを崩す。
  • 遠距離: 一歩離れた位置での動作。

バリンタワクの進化とトゥンバダ

  • 従来のバリンタワクは直線的で広い動作が中心でしたが、トゥンバダを学ぶことによって動きがよりタイトでコンパクトになり、効率的な動きへと変化します。
  • トゥンバダを習得すると、動きは狭くなり、スピードが増します。これにより防御・攻撃ともに隙が少なくなります。
  • 指導者は動きが狭まり、速さが増すことを強調し、広い動作から小さくまとまった迅速な動きへの転換を重視しています。

アンション・バコンのエピソード

バリンタワクの創始者アンション・バコン(Ancion Bacon)はトゥンバダ技術に非常に秀でており、その驚異的な速さで常に他の生徒たちよりも先に動くことができました。一般的なブロック動作よりもはるかに高速で実践的なトゥンバダを使いこなし、自在に相手を打つことができたと言われています。

指導者のアドバイス

指導者は、単に技術だけでなく、創始者や過去の達人への敬意を重視し、動きの正確さや効果的なタイミングの重要性を説いています。

稽古の注意点

  • 常に安全な環境で練習し、力ではなく正確性を重視する。
  • 技術の細部を丁寧に学び、特に相手の攻撃に応じた動作の使い分けを意識すること。

トゥンバダは戦術的にも護身術としても非常に有効であり、バリンタワクをより高度に理解し実践する上で欠かせない技術です。

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