ジョー・ローガンのポッドキャストに、ストレングス・トレーニング界のレジェンド、パベル・ツァッツォリンが登場した。この対談は、単なるトレーニング談義にとどまらず、「強さとは何か?」という哲学的なテーマにまで発展した。パベルが提唱する「合理的な強さの鍛え方」は、現代のフィットネス業界に大きな影響を与えている。この記事では、その核心を掘り下げていこう。
ケトルベルの歴史とアメリカでの普及
ケトルベルはロシア発祥のトレーニング器具であり、18世紀にはすでにロシアの市場で使われていたという。パベルによると、ソビエト時代にはケトルベルが軍隊やアスリートのトレーニングに広く用いられていたが、アメリカではほとんど知られていなかった。
パベル自身、アメリカでの普及は難しいと考えていた。「こんなにキツいトレーニングをやりたがる人がいるのか?」と疑問を持っていたが、**マーティ・ギャラガー(元USAパワーリフティングチームのコーチ)**の助言で、アメリカのフィットネス界にケトルベルを紹介することを決意。結果として、現在ではケトルベルがトレーニングの主流の一つとなっている。
筋力トレーニングの3つの原則
パベルは、長年の研究と経験から、**「強さを最大化するための3つの原則」**を提唱している。
① ステップローディング(Step Loading)
「負荷を一定期間キープし、突然増やす」というトレーニング方法。初心者に最適で、適応を安定させる効果がある。
例:同じ重量で3週間トレーニングし、4週目で一気に負荷を上げる。
メリット:関節や靭帯の適応が進み、ケガを防ぎやすい。
② サイクリング(Cycling)
「軽い負荷からスタートし、徐々にピークに持っていく」という方法。特にパワーリフターや競技選手が使う。
例:12週間のプログラムで、最初は軽めの重量でスタートし、徐々に強度を上げる。
メリット:神経系と筋力の発達を計画的に進められる。
③ 可変ローディング(Variable Loading)
「負荷の増減をランダムに設定することで、身体に新たな刺激を与え続ける」方法。これはソビエトの重量挙げチームが開発した最も洗練された手法。
例:1週間のうちに70%、80%、60%、90%と異なる強度を組み合わせる。
メリット:過剰な疲労を防ぎながら、最大の適応を促す。
アメリカとソビエトのトレーニング哲学の違い
パベルによると、アメリカのトレーニング文化は「常に限界を超えようとする」傾向がある。しかし、それが長期的に見て必ずしも最良の選択ではないという。
ソビエトのアスリートは、「適応を強制しない」という考え方を持っていた。短期間で結果を出そうと無理をすると、かえって成果が不安定になる。そのため、負荷をゆっくり増やし、確実に適応させる手法を取っていた。
例えば、世界最強の重量挙げ選手の一人であるデビッド・リガートは、「筋力を無理に発達させようとしない」と語っていた。実際、ソビエト時代のトップリフターたちは、40代、50代になっても健康で強靭な身体を維持していたという。
ケトルベル vs バーベル vs 自重トレーニング
パベルは、トレーニングの目的に応じて、ケトルベル、バーベル、自重トレーニングを適切に使い分けるべきだと考えている。
🔹 バーベル
メリット:最大筋力を伸ばすのに最適。
デメリット:学習コストが高く、正しいフォームを身につけるのに時間がかかる。
🔹 自重トレーニング
メリット:どこでもできる。
デメリット:負荷の調整が難しく、特に下半身の強化が難しい。
🔹 ケトルベル
メリット:
爆発的なパワー(スイングやスナッチなどの動作が、短時間で筋力と持久力を鍛えられる)
関節への負担が少ない(ナチュラルな動きで負荷が分散する)
機能的な動きの向上(スポーツや日常生活の動作に直結)
「強さ」とは何か?
パベルが最も伝えたかったのは、「強さとは、ただ筋肉を大きくすることではない」ということだ。むしろ、合理的に鍛え、長く強さを維持できることが本当の意味での強さだと語る。
また、ジョー・ローガンとの対話の中で、「どれだけ長く強くいられるかが重要」という点が強調された。例えば、オリンピックの重量挙げ選手やパワーリフターでも、無理なトレーニングをした選手は短命で終わることが多い。しかし、ソビエト式のトレーニングを取り入れた選手は、70代、80代になっても健康で動ける人が多い。
まとめ
パベル・ツァッツォリンのトレーニング哲学は、「無理をせず、着実に強くなること」を重視する。ケトルベルがここまで普及したのは、この哲学が現代のフィットネス界に求められていたからだろう。
✔ 短期間の成果よりも、長期的な強さを求める
✔ 負荷を適切に管理し、怪我を予防する
✔ 機能的な強さを鍛え、スポーツや日常に活かす
これらの原則を取り入れれば、あなたも「生涯強くあり続ける」トレーニングができるはずだ。
あなたのトレーニングは、無理に負荷を上げすぎていないか?
「持続可能な強さ」を目指して、今日からケトルベルを取り入れてみよう!
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